第9章 カコ
次の朝、朝起きるとはもういなくて。「おはよう、行ってきます。行ってらっしゃい。」と書かれた置き手紙と朝食が用意されていた。
なんでだろう、まだ自分の中の罪悪感や、に無理をさせているんじゃないか、という不安が残る。
次会った時にもう一度ちゃんと話そう。お互いの気持ちを言い合おう。の気持ちを、寂しさを、不安をちゃんと聞こう。じゃないと、何も言わないに対して、俺が不安になるから。
そんなことを考えていると、携帯の着信音が鳴った。
「もしもし?」
『あ、翔君、起きてた?』
「うん、今起きた。」
『今日、仕事何時に終わりそう、かな。』
「え?あ、ああ。」
が仕事の時間を聞いてきたことなんて一度もなかったから、驚いた。
「今日は21時まで収録、かな。・・・どうしたの。」
『ん、・・・会えるかな、と思って。』
その言葉に胸の奥がフワッと上がるのがわかった。4年目にもなってこんな感情、俺ってだいぶ乙女なのかもしれない。
「会えます、会います。」
『ふふ・・・はい、よろしくお願いします。』
「ケーキ、買ってくる。」
『ほんと?嬉しいな。』
「うん、任せて。チョコのやつ。」
『それ言っちゃうの?』
「あ、言っちゃった。」
何度もやったこのやり取り。それでもこんなに温かい気持ちになる。
あはは、と笑うが「じゃあ仕事戻ります。」と言って電話を切った。
いつもと変わらない君がそこにはいた。