第9章 カコ
24時32分。合鍵でのマンションのドアを開ける。廊下の扉を開けると、ソファで座ったまま目を閉じるの姿。
「・・・間に合わなかった。」
の隣に腰掛けると、ソファーの沈む音がした。それでも目を覚まさないの髪の毛を撫でる。
「・・・、」
目を開けたに「おはよう」と言った。
「・・・ふふ、こんばんわ。」
不機嫌でもいいはずなのに、眠たそうに笑う君。
「・・・おめでとう、遅くなってごめんね。」
「・・・お疲れ様です。ご飯、食べる?」
「・・・いいの、ぎゅってさせて。」
「え?」
そのままを腕の中に引き寄せた。鼻にかかる髪の毛からの香りがする。
「・・・ケーキ屋さん、開いてなくって。」
「うん、いいよ。」
「、・・・我慢させてるね、俺。」
「・・・翔くん、」
体を離して顔を見つめた。
「ごめん、全然一緒にいられなくて。」
「翔くん、謝ってばっかりだよ。」
「・・・ごめ、」
言いかけてそれを止めた。ほんとだ。俺誤ってばっかだ。
「・・・、」
が俺の肩に耳をつけるようにもたれ掛かる。その頭に右耳をつけるように自分の頭を乗せると、触れたの腕が、指が細くて、無くなってしまうんじゃないかと不安になった。
離れないように、逃げないように、指を絡めて、手を握る。
「・・・、」
からの返事はなかったけど、そんなことはどうでもよくて
「・・・愛してる。」
握るの手が
震えた気がした。
今思えば
その震える意味を知らずにいたのは
俺だけだったね。