第6章 映画館の衝動
扉を開けると、随分ご年配の眼鏡をかけた男性がいた。
「じーちゃん、久しぶり!」
「…あ?」
と、お爺さんが眼鏡を下にずらして翔くんに顔を近づける。
「おー…、翔くんか、久しぶりだねえ。」
「久しぶりに見たくなって。」
「翔くんくらいだよ、こんなオンボロ映画館に来てくれるのは。…おや、そちらのお嬢さんは?」
お爺さんが私に気付いて、翔くんを避けるように、ヒョコッと顔を出す。
「あ、はじめまして!と言います。」
「はじめましてさん、ここの館長をしとります、佐久間と申します。」
「ちゃん、ほら席にいこう。ボロいけど、マッジでいいとこなの、ここ!」
「翔くん、ボロいは余計だ。」
佐久間さんの突っ込みに「ごめん、ごめん、」と翔くんが大きな声で笑った。