第1章 秋風が吹く
.
秋風が吹く
.
この季節
.
.
無性に人肌が恋しくなる
.
.
.
和と別れてからの半年は
.
長いようで短かった…
.
.
いや、長かったのかな…
.
.
もう時間の流れがわからない
.
.
ただ
.
.
今あたしを撫でるのは秋風
.
.
.
手を伸ばしてみてもあなたの体温は感じない
.
冷たい本の1ページ
.
変わらない笑顔であたしを見てるだけ
.
.
でもいつも見てた笑顔はこれじゃない
.
.
道路を走る車の
.
プップーっと大きなクラクションの音で我にかえる…
.
.
.
本を棚に戻して
.
大きなお腹と荷物を抱えて家に帰った
.
.
.
「ただいま」
.
誰もいない1Kのアパートに1人喋る
.
「疲れた~…ヨッコイショ、あ~腰が痛い」
.
.
買い物袋もそのままに
.
ソファの上に寝転んだ
.
.