どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第8章 君の理由
ヒソカが可笑しそうにくつくつと笑う。その一方で、クラピカとレオリオが、気持ち引いている気がした。少し悲しい。
……と、そんなやり取りをサキらがしているうちに、後方から微かに聞こえていたガーッという軽い音が、段々と大きくなってきていた。
『この音は……』
私は、ドキドキとしながら耳を澄ませる。あれは恐らく、誰かがスケートボードに乗っている音。いや、“誰か”なんて、見なくても分かる。
すぐ後ろにまで近付いてきたその音に、サキは目だけでそちらを確認した。
揺れる、柔らかそうな銀髪。猫のように大きくも釣り上がった目元。青みを感じるほどに白い肌。
立ち姿に余裕を感じさせる少年は、私よりずっと年下にも関わらず、どこか近寄りがたい雰囲気を纏っていた。
「おいお前!きたねーぞ!そりゃ反則じゃねーか!!」
唐突に、レオリオが少年に物申す。
少年の雰囲気云々など、全くもってお構いなしだ。
「何で?」
少年はスケートボードの速度を緩め、振り向き尋ねた。
生意気さの中に、冷ややかさを覚える声質。
これも、私が昔、何度も何度も聞いた音色だ。
「何でっておま……こりゃ持久力のテストなんだぞ!?」
「違うよ、試験管はついて来いって言っただけだもんね」
「ゴン!!てめどっちの味方だ!?」
「怒鳴るな。体力を消耗するぞ。何よりまず煩い。テストは原則として、持ち込み自由なのだよ」
吠えるレオリオに、ゴンとクラピカのツッコミが飛ぶ。特にクラピカの指摘には、レオリオも返す言葉を無くしたらしい。
少年は彼らのやり取りを気にせず、自分と同じ年頃のゴンをじっと見つめると、
「ねぇ君、年いくつ?」
と尋ねた。
「もうすぐ12歳!」
「ふーん」
明るく答えるゴンに、少年は暫し間を置くと、
「やっぱオレも走ろっと」
と言って、乗っていたスケートボードを蹴り上げた。