どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第8章 君の理由
彼は宙に舞うスケートボードを、そこに来ることが分かっていたように片手に取り、脇に抱える。
「かっこいー」
ゴンが感嘆の声を上げた。
それまで無表情だった少年が、はじめて片方の口角を上げる。
「オレ、キルア」
「オレはゴン!」
私達の一団の先頭で、二人が互いに名を名乗り合う。
そんな微笑ましい光景に、私はうずうずする気持ちを抑えられずにいた。
『~~~!キルア、合流っ!!』
私は心の中でガッツポーズを決める。案の定サキの視線は痛いが、ほとんど気になりはしなかった。
だって、HUNTER×HUNTERの世界にやって来てからだ。こんなにも、心が動き始めたのは。
キルアの合流も、それはもう飛び跳ねるほどに嬉しい。
そして同時に、私にもまだこんなに動く心があったのだなと改めて感じ、それも嬉しくて仕方なかった。
『……仕方ないヤツ』
気のせいか、小さくため息を吐くサキの目許が緩む。
「オッサンの名前は?」
「オッサ……!これでもお前らと同じ十代なんだぞ!?」
「ウソぉ!!?」
「あーーー!ゴンまで!!ひっでーもう絶交な!!」
隣では、キルア、レオリオ、ゴンの三人が早速じゃれ合っていた。
というか私、絶交って言葉聞いたの小学生以来かもしれない。
クラピカは、わんわんと響く声の主らから、若干距離を取りはじめたいた。
『ふーん、他人のフリしちゃうのね』
クラピカを目で追いながら心の中でそう呟いたサキは、にやぁと悪そうな笑みを浮かべる。
「十代に見ろって方が無理あんでしょ。ねぇ、クラピカ?」
サキがまるで、離れるクラピカの首根っこを掴むように声掛ける。
愕然とした表情でこちらに振り向くクラピカに、サキは満面の笑みを向けた。
「ナ・カ・マ・デ・ショ?」
サキが口の形だけでクラピカに告げる。最後は可愛らしく?首を傾げて。
……サキ、今日イチで楽しそうだ。
「あ、さっき騒いでたビッチねーさんじゃん」