どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第7章 一次試験、開始
「ここに辿り着くまでの倍率さ。お前達、新人にしちゃ上出来だ。それじゃ頑張りな、ルーキーさん達。お前達なら、来年も案内してやるよ」
旦那さんが、ニイッと笑い、軽く手を振る。
「ん。ココまでありがと、旦那さん」
話の流れを知っているため一人余裕のあるサキが、旦那さんに軽く礼を言った。
「でも、次は無いわ。私達、今回で合格させてもらうから」
サキは腰に手を当て、不敵な笑みを浮かべる。
「そうかい」と、旦那さんは目を線にした。
サキと旦那さんの様子に、ゴン達三人が互いにふっと微笑み、頷き合う。
「ありがとう、キリコさん!」
「世話になったな!」
「ありがとう」
ゴン達三人が、旦那さんと握手を交わしてゆく。
いいなぁ、と私は彼女の中で思った。
『すみません、サキ。私からも旦那さんにお礼が言いたいので、ここまでありがとうございます、と、伝えて頂けますか?』
『お安い御用よ。ってか、どうせだったらアンタの言葉で伝えたら?前みたいに、あたしが演技したげるからさ』
『えっ、本当に?本当に、いいんですか?日中は、折角のサキの時間なのに』
『夜まで引き留めておける訳でもあるまいし、つべこべ言わない!』
『は、はい!ええと、では、お言葉に甘えて……。いいですか?』
『いつでもドーゾ』
おずおずと、ゆっくり旦那さんに視線を向けると、動線をなぞるようにピントが合った。サキが感覚を寄せてくれているのが分かる。
「だ、旦那さん!」
サキが、私の言葉として旦那さんに声掛けた。
皆が、ハッとしたように振り向く。
やはり彼女の“私”は、自分でも驚くほど“私”だった。
思わずつかえてしまった音まで再現してしまうほどに。
それを流石と思う反面、遅れて耳にする自分の声に、恥ずかしさも倍増する。
ただ、今それを気にするのはナンセンスだとも思った私は、照れる自分を努めて意識しないようにした。
「ええと、私です、サチです。その、私からも、お礼の気持ちをお伝えしたく……。短い期間でしたが、本当にお世話になりました!」