どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第7章 一次試験、開始
「へぇー、結構色々売ってるのね」
「見てよサキ!ジャポンの面だって!」
『ジャポ……え、能面!?』
「ちょっとやめてよゴン!マジで呪われそう!」
旦那さんに連れられ、私達は道草を食いつつ会場へ向かう。と言っても、はしゃいでいるのは主にゴンとサキ、そして私だ。
「ハハハ、心配無い。ザバン市は観光地だからね。港が近いとあって他国の変わった品も多いが、大概は客用の量産品さ」
背後から覗く旦那さんが、可笑しそうに言う。「へぇー!」と、ゴンはそれでも興味津々だ。
っていうか旦那さん、今、暗に呪いの存在認めました?いやまあ、無意識の念って意味なのだろうけれど……。
「……なぁクラピカ。さっきの話、どう思う?」
「……サチが幽霊、という話か」
レオリオとクラピカが、後方でひそひそと話をしている。サキはゴンと他愛ない会話を交わしながら、意識だけを二人に向けた。
「あぁ。オレには、アイツが嘘を吐いてるようには見えなかった」
低く響くレオリオの声に、私は期待のようなものを寄せる。けれど彼は、言いにくそうに「だが」と続けた。
「オレは正直、幽霊なんてモンは信じられねぇ。見たこともねぇからな」
彼が肩をすくめるような、そんな気配がする。
なんとも言えぬ、間があった。
チクリと胸が痛んだ気がしたが、私は気付かぬふりをした。
「私も同じだよ、レオリオ」
小声でありながらも澄んだクラピカの声が、柔らかな音を持って聞こえる。
「至極非科学的な話であると思う反面、彼女に嘘を吐くメリットがあると思えない。ならば、“少なくとも、彼女はそう解釈している”と、我々は認識すれば良いのではないか?」
クラピカの答えにレオリオは少し考え、「そうか。そうだな」と呟く。そして、
「お前に話して良かった」
と穏やかな声で言った。
私は二人が、戸惑いながらも寄り添おうとしてくれていることに、胸がじわりと熱くなった気がした。
サキは誰にも気付かれぬように、小さくため息を吐いて、
『信じらんないなら理解する必要なんて無いだろうに……ホント、キリコさん達といいゴンといい、コイツ等といい、ヒトのこと信用し過ぎじゃないの?』
と、呆れつつも満更でもなさそうにこぼした。