どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第6章 新たな出会い
皆が飛び出してから10分程経っただろうか。
レオリオは椅子に座る息子さんに励ましの声を掛けながら、傷──変幻魔獣である彼が皮膚をそれらしく変化させたもの──の手当をする。
「私は、無力です。ただこうして妻の帰りを待つことしかできない……」
知っていなければ、演技とはとても思えないような息子さんの様子に、彼の指先に包帯を巻き終えたレオリオは落ち着いた声で言った。
「怪我人のあんたが他に出来ること、一つだけあるぜ」
彼はじっと息子さんを見つめ、息子さんが顔を上げたタイミングでニッと両方の口角を上げる。
「一番いい表情(カオ)で、嫁さん迎えてやることだ」
室内に響く、心地よい声色。
……レオリオは、やっぱり優しいなぁ。
私は、息子さんが眉をハの字にして微笑むのを、床に寝転び見ていた。
──と、その時。またもコンコンとノック音がした。
レオリオがハッと身を屈め、腰の辺りに手を当て──恐らくナイフを隠し持っているのだろう──「誰だ」と声掛ける。
すると、
「レオリオ、私だ」
と、女性とも男性ともつかぬような──つまりはクラピカの声がして、キィ、と扉が開いた。その先には、月光によく馴染む金糸の髪を夜風に遊ばせる、民族衣装を纏った中性的な顔立ちの青年が、娘さんと共に立っていた。
私は彼を一目見て、もし彼に「私は、実は女だ」と突然告白されたとしても、何の衝撃も受けないだろうと確信する。
レオリオは彼の名を呟いた。その後ろから、息子さんが穏やかな口調で話し掛ける。
「終わったんだね」
「少し早かった?」
「いや、十分だよ」
二人の兄妹の会話を目を伏せ聞くクラピカとは対照的に、レオリオは一瞬ぽかんとしたあとすぐに「ま、まさか!!」と大声を上げ、彼らを交互に指差した。そのローテーションの中に、いつしか私も組み込まれる。
「くっそー、そうか、あんたもか!!」
完全に察したらしいレオリオに、私は苦笑いしてペコリと頭を下げた。
「ごめんなさい。騙すつもりは……ありましたけど」
「だろうな!」