どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第6章 新たな出会い
レオリオは、しっかりと目を見て話してくれる。彼はきっと、いいお医者さんになる。
ただ私はと言うと、騙しているという罪悪感や単純な照れから、段々と彼の目を見ていられなくなっていた。
俯き、口元を拭いつつ私は返す。
「大丈夫、です。少し、くらくらするだけで。……はは、口の中、切っちゃったみたいです」
不意に、さらりと私の前髪を彼の指が分けた。
大きな手のひらが、そっと額に触れる。
「熱があるのか?」
レオリオがこちらを覗き込む。
その眼差しに、私は思わずどきりとした。
次第に、熱が顔面に集まってくる。
──私!演技!向いてない!
心の中で叫んだ。
そして、盛大に噎せた。
口の中に残っていた血糊を、呼吸と共にうっかり飲み込んでしまったのだ。
覆う手も空しく、私は彼に血糊を吹き掛ける。
あ、と時が止まった。
「ご、ごめんなさいっ!!!」
おでこに頬に襟元に……私は慌てて体を起こすと、飛んだ血糊をハンカチで拭う。
もう、緊張するわ照れるわ申し訳ないわ恥ずかしいわで、どうしようもないほど一杯一杯だ!かと言って、今更演技を止めることも出来ない訳だが!
などと心の中で叫び回っていると、レオリオが突然、私の、血糊を拭き続けるその腕を取った。
「ねーちゃん、あんた本当に口の中を切ったのか?」
──ぎくり。
彼の問い掛けに、私は一瞬顔を強張らせる。
もしかして、バレた……?
けれど彼の表情は真剣そのもので、警戒とは少し違う気がする。
「息苦しさはあるか?胸に痛みは?」
「い、いえ……?」
レオリオは他にもいくつか質問したが、私が全て首を振るので、う~む、と首を捻った。
「とにかく、あまり動かない方がいい」
そう言って、レオリオは私を寝かせる。そして彼は上着を脱ぐと、横たわる私に掛けてくれた。
彼が、息子さんの手当に向かう──。