どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第6章 新たな出会い
「なんだって?」
キリコさんは複数回瞬きする。
「この家に住むナビゲーターの夫婦って、アナタ達魔獣の事なんでしょ?で、人型の二人は娘さんと息子さん。合ってるわよね?」
「……ほぅ、よく調べて来たな」
キリコさんは女性を捕らえる腕を緩める。ストンと床に降りた女性は、這いつくばっていた男性とほぼ同時にすくりと立ち上がった。
キィ、と裏口の戸が開き、もう一人のキリコさんが顔を出す。
手前のキリコさんはこちらを向いたまま、弧状の目と長い耳でそれらを確認し、話を続ける。
「おっしゃる通り、私達がナビゲーターだ。私が家長を務めている。サキ殿。君は素晴らしい情報収集能力をお持ちのようだね。合格だ。君を無事、試験会場へ案内しよう」
手前のキリコさん──つまり旦那さんはそう言って、サキが差し出す右手に爪が掛からないよう、そっと握手した。
奥さん達が、にこやかな表情で拍手をくれる。
「撫でるのはまぁ、妻が妬かない程度に頼むよ」
「ありがとう」
彼女がやわらかく微笑んだのが、私にも分かった。
「──じゃあ早速、山を下りようか。一旦、会場近くの宿まで案内するよ」
「ちょっと待って」
旦那さんが、すれ違い様にポンとサキの肩を叩く。そしてドアノブに手を伸ばす旦那さんを、彼女はハッとして呼び止めた。
「もう少しココで待たせてもらって良い?話してみたいのよ、他の受験生と。勿論、ココまで来る実力のある、ね」
「……構わないが、待つだけ無駄かも知れないぞ?誰一人ここまで辿り着かない年もある」
「その時はその時よ。それに、誰か来そうな“気がする”の」
『……ゴンにレオリオだっけ?あと、クラピカ』
サキは、私がこの2週間の内に思い浮かべた彼らの顔を思い出す。
私は、少し視線を落とした。