どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第6章 新たな出会い
『そう言えばさ、アンタって具体的にどのくらい先の事まで知ってんの?』
数日前、私はホテルの部屋でココアを飲むサキに、そう尋ねられた。私は、ええと、と記憶を辿る。
確か、グリードアイランド編の途中で来期のハンター試験があった。その次の試験は王位継承戦前……ビヨンド=ネテロ側の人間をふるいにかけていた。そして、船の出発日は8月8日?だったはずだから──
『2年後の8月ごろまでのはずです。と言っても、ゴン達の周りで起こる出来事しか知りませんし、曖昧な部分も多々ありますが……』
『ゴン?このツンツン頭の子が主人公?』
サキが直ぐ様、私が無意識に思い浮かべた映像を引っ張ってくる。
『そうです!純粋でひたむきで、色んな意味で強い子ですよ。あとはキルアにクラピカ、レオリオ。この四人がメインに動くことが多いですね。皆、凄く魅力的なんです!それぞれに背景も課題もあって……』
そこまで言葉にしたとき、ゾルディック家の家族写真や本を積み上げ勉強するレオリオ、そしてクラピカの緋い目と蜘蛛の刺青が脳裏にちらついた。
あ、待って。駄目。これは、この話は、彼らを大切に思うサキにはまだ、伝えたくない……!
私の想像の中、サキはクラピカに対し『絶対に許さない』と憤る。
『サキ、ココア!ココアってホッとしますよね!アイスじゃなくホットだからですかね!』
気を逸らそうと思うのに、いや、むしろ思えば思うほど、私の“無意識”はクラピカにフォーカスしてゆき、要らぬ映像まで流してしまう。ブツ、ブツ、と途切れ途切れに浮かぶウボォーとの戦いのシーンに、サキの記憶の中で見た少年時代の彼が映り込んだ。クラピカの鎖が、ウボォーを縛る──。
サキがコップを、ことりと置いた。
『……死ぬの?ウボォーは』
サキは、静かな口調でそう尋ねた。
彼女ならきっと怒るだろう。そう思っていたのに、実際にそこにあったのは、ただただ深い、哀しみだった。
彼女の痛みが、私の胸にも染み込むように広がる。
私は心の中で、きつく拳を握った。
『……そんなこと、させません』
言葉が、口を衝くように出る。
『クラピカに人殺しなんて真似、私が絶対にさせません』