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どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】

第6章 新たな出会い


あの木の幹周りは、いったい何十メートルあるのだろう。
見たこともないほど巨大な杉からの木漏れ日が、山小屋をちらちらと照らしている。それは、今まで歩いてきた森の鬱蒼とした印象とは異なり、どこか懐かしさを感じさせる、そんな光景だった。

『アレね、魔獣の棲む家は!』

サキが一度大きく息を吸い込む。そして、先ほどまでとは打って変わり、背筋を伸ばし歩き始めた。

……良かった。サキも結構楽しんでいるみたいだ。

森を抜け、庭というにはあまりに簡素な広場に出る。木々が巨大な杉の陰を避けるように生えているせいか、山がその一本の杉のために、一帯の栄養を寄せ集めてしまったのではないかと感じるほどだ。
なんて、そんな事を思っている内にサキは山小屋前まで歩を進め、玄関先の手摺を撫でながら階段を登る。

『作りもしっかりしてそうだし、良いトコじゃない』

小屋自体は随分昔に建てられたように見えたが、手摺にはささくれもなく、十分に手入れされているように思った。

『さてと』

「上がるわよー」

サキは、流れるように小屋の扉を開ける。
すると室内にいる、狐のような顔をした体長が3メートル近くあろうかという二足歩行の獣と、磁石が付くように目が合った。

若い女性を抱え、攫おうとする獣。
その一番短い指でも私の掌ほどの長さがあるだろうか。鋭利な爪が、薄く差し込む日光を反射している。
床には、顔を歪ませながらも女性へと必死に手を伸ばす男性が倒れている。
椅子もテーブルも脚が折れ、食器の破片があちこちに散らばっていた。裂かれた布は、テーブルクロスだろうか。荒れ果てた室内に漂うのは、緊迫した空気。

──すごい。迫真の演技だ。キリコさん、想像よりずっと大きい!!

場違いかもしれないと思いつつも、胸を躍らせずにはいられない。
私の様子にサキは小さく笑い、その大きな獣、つまりキリコさんに向かい歩を進めた。
彼女が二、三歩歩いたところでキリコさんは身を屈め、戦闘態勢に入る。しかし彼女は尚も近付き、友人と話をするような距離で立ち止まった。
訝しげな、警戒するような表情のキリコさんに、彼女はすっと右手を差し出す。

「はじめまして。あたしはサキ。アナタは旦那さん?それとも奥さん?どっちでもいいけど、後でちょっと撫でていい?」
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