どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第2章 彼らの世界へ
さっと血の気が引く。私はきょろきょろと照明の落ちた店の窓を探し、自分の姿を確認した。うん、そんなに変わってる感じはしない。服装だって、あの日のままだ。ブラウスにジャケット、ミモレ丈のフレアスカートに、パンプス。
じゃあ、どれくらい経っているんだろう。
「すみません、今年って何年でしたっけ」
「1998年だよ」
「経ってなかった」
しかも、1998って事は、平成10年?うわ。つまり、タイムスリップしたって事?だよね?26歳のまま?
「夢って事にした方が早そう」
なんだかもう論理的に考える事に疲れてきた。そう思ったら声に出ていた。イケメンの彼は、中々に愉快そうに見える。それって、私が焦ってるの見て楽しんでません?まぁ、ここまで来たらもう開き直りますけど!
「キミは見ていて飽きないね」
「褒め言葉として受け取らせていただきます」
「そのつもりさ。さあ、着いたよ」
そう言って彼に促されるまま目をやると、雑誌でしか見た事のないような厳かな雰囲気のレストランがそこにあった。
「いらっしゃいませ、ヒソカ様」
ウェイターが、イケメンの彼に深々と頭を下げる。
「僕の顔に何か付いてるかい?」
イケメンの彼……否、ヒソカさんが私に声を掛ける。危なく驚きで息が止まるところだった。
そうだ。ヒソカなんてちょっと珍しい名前だろうけど有り得ないとは言えないし、その人がちょっと浮世離れしてるくらい高身長でイケメンで、ある漫画のキャラクターが髪を下ろした姿と重なったとしても、相手は生身の人間だ。そうだ。自分が漫画の中の人物と話してるだなんて思う方が非現実的というか、いやまあ死後の世界とかの時点で非現実的ではあったのだけれど、
「はっ、ごめんなさい!ヒソカさんて言うお名前だったんですね!私は今宮沙知。沙知がファーストネームです」
ああ、なんかファーストネームとか余計な事言っちゃった気がする。日本語通じるんだから、名前の語順分からない方がおかしいのに。
「サチ、か。いい名前だね」
彼はそう言って私に向き直り、英国紳士の様な見事なお辞儀をして見せた。
「僕の名前はヒソカ=モロウ。Ms.サチ、以後お見知り置きを」
手を取られ、その甲にキスをされる。
頭がボンッと爆発するかと思った。