どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第4章 異心同体
彼女が自分のこめかみに手を当てる。医学的な知識が乏しい私でも、その状況がすこぶる悪いという事は理解した。
「受付!!」
彼女が、大声を上げる。その声に私までビクリと反応してしまった。
「救護、いつ到着すんの!?」
声を出すまいか否かと戸惑っている受付嬢に、彼女は畳み掛けるように「おい、返事ィ!」と怒鳴る。
「はっはいぃ!ぼっ、暴漢の拘束或いは無力化により内部の安全が保証されると判断でき次第との事で……!」
「それ、誰が判断すんのよ!?」
「わ、私に聞かれてもぉ……」
半泣きの受付嬢が、テーブル越しに上ずった声を出した。
『これじゃ待ってらんないわ。でも、まだ他のヤツの処置が終わってない……』
彼女がぎりりと下唇を噛み、視線をあちこちに移動させた。
彼女がこの顔面蒼白な男性を連れ直ちにここから離れれば、未処置の人の命に関わるかもしれない。かといって、受付嬢に運び出させるにしては、この人は巨漢すぎる。
『ナイスよ、サチ』
『……え?』
一瞬、何に対して褒められたのか分からなかった私だったが、彼女の視線がある人物を捕らえて離さないため、すぐに察した。
「ヒソカ、って言ったわよね?あんた、コイツ連れて病院に行きなさい」
命令口調の彼女は、ヒソカを睨む。
「ボクが?」
「……“ボクが”?」
まさか自分に振られると思って無かったのだろうヒソカが、自分を指差し尋ねる。その言動は、カチン、と彼女の中の何かを打ったらしかった。
「ってか元を辿れば丸々全部、100パーアンタの責任でしょうが!10分の1くらい手伝いなさい!!」
『っはー、マジで無いわコイツ』
言いながら、彼女の怒りがムクムクと膨れ上がっていくのを感じる。逆に私は、それをおかしく感じてしまった。この子は、ヒソカの事が怖いんじゃなかっただろうか?
『それとこれとは話が別よ!』
片方の手を腰に当て口を尖らせる彼女に、ヒソカがクスクスと笑う。
「仕方ないなぁ、イイよ。ただ、君にも付いて来てもらう」