どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第4章 異心同体
『結構出血してるけど、顔色はそう悪くない。それに、複数の傷を負ってはいるものの、全て急所から外れている』
男性の全身をざっくりと視認し、彼女は思った。
『ってか、外してあるって言った方が正しそうね。快楽殺人鬼にしては、理性的じゃない。これは本当に、私達を殺す気が無いのかも。少なくとも、ここでは』
彼女は顔を上げると、倒れる人々の状態をざっと見渡し確認する。中には警備員らしき風貌の人達も居た。
『応急処置の優先順位としては、足元のコイツと金パのアイツ、あと警備員のおっさんからって感じね。まぁ他も、早めに処置しないとなのは確かだけど』
彼女はちらりと受付を見やる。人影はない。しかしそこには人の気配を感じた。
やや高めの呼吸音。受付嬢が息を潜めているのだろう。
エントランスに居る人間は、それで全てだった。入口付近にも、人気はない。
『入場規制済みってわけね。さすが野蛮人の聖地、対応が早いわ。今は警備員の増員と救護待ち、って感じかしら?』
彼女は担いでいた男性をそっと床に寝かせる。止血は上手くいっているようだった。彼女は薄く微笑むと、隣で伸びる大柄な男性の怪我を処置してゆく。
クックックッと、少し先からヒソカの笑い声がした。彼女がふと視線を移すと、彼は口元に手をやり笑っていた。細められた彼の目に、ぞわりと背筋に悪寒が走る。
「あぁ、君も本当に面白い。うっかり食べてしまいそうだ」
そう言って舌なめずりをするヒソカに、私は心の中で小さく声を上げた。
『圧されちゃいけない』
横たわる男性への処置が一段落したため、彼女は立ち上がる。そしてヒソカを一瞥すると、次の怪我人の元へと向かった。
気丈な彼女に、私はどこか傍観しているような気分になる。
「ふぅ」
彼女が4人目の処置を終え、額の汗を拭う。それをヒソカが楽しげに見ていた。
「手慣れているね。処置も的確だ。だが……カレは良いのかい?」
ヒソカはゆるく腕組みしたまま、彼女からもヒソカからも離れた位置を指差す。彼に導かれるままに視線を移すと、浅く呼吸をする男性に止まった。彼女が、ハッとしてその男性に駆け寄る。
『顔色が急に悪くなってる!?額には冷汗、皮膚は冷たいし、爪が白い……明らかに血が足りてない!見た目の出血は大したことない、となると出血は中の方……!内臓を損傷してる可能性も高い!』
