どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第4章 異心同体
──え。
ヒソカとサキを遮るものが、無くなる。
けれど彼女は気に留めず、うずくまる男性の隣で片膝を付いた。
「サチからは以上よ。交渉決裂って事なら、あたしはあたしの好きなように動かせてもらうわ。当然、ココにも戻って来ない。別にあたしを殺してくれてもいいけど、あたしはアンタと戦わないし、何も喋らない」
『……この方法も、交渉とはほど遠い。けど』
サキは男性の袖を破って結び、手際よく止血する。
『アイツ、獲物を狩るのが好きなんでしょ?無反応以上に面白くないものはないはずよ』
黙々と応急処置をする彼女。
こんな時、彼女の名前を呼べたらと思った。
「アンタがあたしの何に興味を持ってるのか知らないけど、邪魔するなら全て墓場に持っていく覚悟があるわ」
私は、心の中で拳を握る。
殺してくれていいだなんて、彼女にそんな宣言をさせてしまったことが、胸に刺さった。
私が彼女を巻き込んだようなものなのに。
『つくづくバカなのね。さっきも言ったけど、全部自分のせいだと思うのは傲慢よ』
傲慢。そうかもしれない。でも、だからって自分に全く責任が無いなんて思えない。そう簡単に、考え方は変えられない。
そんなことを考えている私に、彼女は小さく溜め息を吐いた。
『今の宣言だって、別に仰々しいもんじゃないから。ていうか、ここで死ぬなんて真っ平ごめんだし』
私に語りかけながら、彼女は男性を脇から支える。男性が、ありがとう、とかすれた声で呟いた。
『……じゃあ、どうしてあんなことを?』
『いい?これは賭けなの。殺される気はない』
彼女はゆっくりと立ち上がる。
『けど、そうする覚悟ができた。アンタのお陰でね』
そう言う彼女の声は、私の中に柔らかく響いた。
『なに?感動しちゃった?でも、これからが本番よ』
男性を抱える彼女が、ついにヒソカと相対する。
「無いと思うわよ、メリット」
床には十人で利かない人数が、ヒソカを中心に倒れていた。
不気味なほど、静かなオーラ。妖しい瞳。
彼女は視線を合わせたまま、一歩、また一歩と進む。
そしてエレベーターから降りたところの、一番近くで呻き声を上げる大柄な男性の横にしゃがんだ。
彼女はヒソカを一睨みすると、視界の端にヒソカを捕らえつつ隣の男性に視線を移す。