どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第4章 異心同体
『会話ァ?』
エントランスからは多くの呻き声がする。目の前には血だまりに膝を付く男性。それらに対し、大した感情を持ち合わせていなさそうな声色の、彼。
『アンタ、コイツがどんなヤツか知ってるんでしょ?こーゆータイプには命乞いも泣き落としも無駄。良心に訴えかけたって意味無いわよ。一体何を話すっての?』
彼女の、私を睨むような言葉。
“確かにそうだろう”と、私も思った。
ただ、同時に違和感も覚えた。
私は、命乞いをして、彼になぜこんなことをするのかと問いただしたいのだろうか。
いや、たぶん、違う。
「どうしたんだい?」
彼女の尻切れな否定に、彼が二の句を促す。
彼女は、応えるつもりがないらしい。
……彼のしたことは、許されないことだ。
けれど、彼という人間を、私はずっと前から知っている。良くも悪くも、受け入れてしまっているんだろう。
なのに今辛いのは、憤りを覚えるのは……私が、この状況を想像できたはずだったのに、しなかったから。
周りへの影響をろくに考えず、逃げることしか選択肢に持たなかったから。
そう、つまりこの現状は、彼だけじゃなく私にも責任がある。
『……だから、一刻も早くこの人達を病院に連れていくための、交渉をします。幸い、ヒソカは私達に関心を持ってくれているようですから』
『アンタって、ホントにバカなのね。呆れる。何の責任だか』
彼女は小さくため息をつくと、
「考えが変わったのよ」
と、彼に向けて呟いた。
『ってか呆れを通り越して最早尊敬するレベルね。言っとくけど、アンタが逃げる気になる前にあたしは動いてたんだから。あたしの判断と瞬発力をバカにするなら、許さないわよ』
落ち着いた口調。私はその言葉に、彼女なりの優しさを感じた。そして、そう思った途端、頬や目の辺りが熱くなるのを感じた。きっと、彼女が照れて──
『いいから、アンタはちょっと黙ってて!』
……怒られた。
「確認だけど、アンタはサチってヤツを探してて、あたしが行方を知ってると思ってるし、“絶”も関連してると思ってる。ってことでいいのね?」
彼女が質問を投げ掛ける。
「ああ、いいよ。だから君を追いかけてきた。いや、“君達を”と言った方が正しいかな?」
「……説明の手間が省けて助かるわ」