どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第4章 異心同体
隠し武器による、二段構えの攻撃。
すごい。こんなにも早く動けるものなんだ。
でも……なんで?
隠し武器を仕込んだ覚えなんて、私には当然ない。
けれど彼女は、そこにある、という事を知っていた。
……確信してしまうのが怖い。
ダン。
彼女は、翻るように扉を抜け、左右と部屋番号を瞬時に確認し、走り出す。
『ラッキー階段近い!ってか何で動揺してんの?コイツ。マジで自分の体だと思ってるってワケ?』
彼女の思考に、ギクリとする。
彼女が私を騙そうとしている訳ではない事が、感覚として分かる。
じゃあ、暗がりに映ったあの自分の姿は、一体?
見間違えた?それとも願望?
生きて、いたかった?
ぐるぐると、この数時間に起こった事を思い返す。
『……そう、あんた、死んだの』
『……!』
階段前で、彼女は逃げる足を止める。
脳裏には彼女のイメージとして、先ほど私の思い返した映像の断片が広がった。
奇しくもその映像は、私達が彼女を攫ったわけではないと言うことを含め、言葉よりも本当らしさを持って、事の経緯を彼女に伝えたらしい。
『……そう、なんですよね。理解してるつもりだったんですが……、実感が伴ってなかったんだって、今、気付きました』
何だか急に、胸がずんと重くなった気がした。
そしてなんとなく、彼女が私をじっと見つめているようで居心地が悪い。
『そうだ!誘拐犯の疑いも晴れたことですし、一度部屋に戻──』
なんて、気を紛らわそうとテンションを上げた次の瞬間だった。
全身が総毛立つような、空気がビリビリと振動するような、肌に触れる全てが別の物質と入れ替わってしまったような、“ヤバい”としか言いようのない感覚が、来た。
「なによ、コレ……!」
一つだけ、思い当たる。
ヒソカだ。
そう、感覚が呼びかけてくる。
でも、でも、だとしたら本当に危険だ。
逃げなきゃ。
逃げなきゃ!!