どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第4章 異心同体
「何?キモいんだけど」
『き、キモい……』
言葉のナイフが胸に刺さる。
『サチにヒソカ?っていうか“私の身体を動かしている彼女”って、あたしの事!?冗談キッツ!信じられるワケないでしょ、ヒトを攫うような奴ら』
確かに、彼女の立場なら私も疑うだろう。
『でも、攫うというのは勘違いなんです!』
『あの扉が隣の部屋と繋がってんなら、恐らくこっちが出入口』
彼女は私の言葉を意識して聞かないようにしたらしい。
私の意思とは無関係に動く身体は掛布団をいい加減に剥ぐと、ヒソカの居ない方の扉へと真っ直ぐに向かった。
彼女がドアノブに手を掛ける。するとヒソカが、スッと目の前に立ちはだかった。
『全く気配が無かった』
彼女の言葉と共に、心臓が大きく鳴る。
「ふうん、結構やるんだ」
『ええ、彼は』
「退いてくれる?」
彼女が不機嫌そうに言う。
「退けと言われて退くつもりなら、君の前に立ち塞がりはしないさ。君は、サチじゃあなさそうだね。誰だい?」
「答える義務は無いわ」
両者共に暫し無言になる。
ヒソカの目が、怖い。逸らしたい。でも、彼女がそうしない。恐らく睨んでいるんだろう。
『あの!もう少し和やかに行きませんか?きっと話せば分かると思うんです……!』
『ごちゃごちゃ煩いわね。声だけのアンタにも、こんなピエロ野郎にも、構ってあげる暇、無いの』
やはり辛辣。
けれど、ようやく返答らしい返答があった事が、私は嬉しかった。
『取り敢えず、彼はピエロじゃなく奇術師らしいです!』
「質問を変えよう。サチはどうしたんだい?」
どうでもいいような訂正をしていると、ヒソカが先に言葉を発した。
「誰それ?知らない」
『えぇ!?』
「へぇ、そう。で、済ますと思ったかい?」
ヒソカが、私の顎をクッと上げ覗き込む。それを彼女はパシリと払った。
「馴れ馴れしい。仮に知っていたとして、アンタに話すメリットが無いわ」
「なら余計、ここを通すワケにはいかないな」
彼女が吐き捨てるように言うと、彼は一層目を細めた。
『コイツ、ひょっとして念使い?サチって奴の声が聞こえるのも能力だとか?まぁいいわ。幸い扉はオートロック。内側からは簡単に開きそうだし、ナメてくれてる内に足を掬って』
『……やめておいた方がいいと思いますよ』