どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第4章 異心同体
それで、HUNTER×HUNTERの世界に来て、ヒソカに出会った。精孔を開いてもらって、纏を覚えて。その状態のまま、彼の攻撃を避け続けろと言われて、限界が来て……。
うわ、ひょっとして私、そのまま寝ちゃった!?
汗びっしょりだった筈なのにお風呂に入った覚えはないし、勿論化粧も落としてない。コンタクトだって付けたままだ。
最っ悪……。
一刻も早く身体を起こしたいのに、今だに全く力が入らない。
仕方なく、私は時が過ぎるのを待った。
暫くして、ピピピという電子音が壁一枚隔てた所で聞こえてきた。
鳴り止んだかと思えば、ヒソカの声が遠く聞こえる。何を話しているかまでは分からない。けれどこの現実は、昨日の出来事を夢で済ませてくれないらしい、というのは理解できた。
かっと目が開く。見慣れない天井。
がばっと上半身が起き上がる。
『ここどこ!?』
脳内で強く声が響く。
……いやいや、だからヒソカの部屋だ。まずいな、まだ寝ぼけてるみたいだ。
「誰!?」
私の口が動いて、私の声がした。
勿論、動かした覚えも言葉を発したつもりもない。
誰、って誰のこと?
「は?あんたに決まってんでしょ。どこにいんの?姿くらい見せるのが礼儀ってもんじゃないワケ!?」
やはり私の声。そして、酔いそうなほどに視点が動く。
気持ち悪い……と感じていると、入り口とは別の扉が開いた。
「おはよう。朝からやけに元気だね。疲れは取れたかい?」
ヒソカが前髪をかきあげつつ、お染みの奇術師スタイルで姿を見せる。
『男……。さっきの奴じゃない』
また、頭の中で声がした。
私の……いや、この子の声だ。
「……この子?何言ってんの?あんた達の目的は何?」
キョトンとしたヒソカが、私を見つめた。
何が起こっているのか、詳しい事はさっぱり分からない。
でも、この状況を一番理解しているのが私だという事は、分かった。
私がすべき事は、今、私の身体を動かしている彼女に──突然この部屋に連れて来られたと思って困惑している彼女に──できるだけ寄り添い、声掛ける事。
『……聞こえてるん、ですよね?……大丈夫。落ち着いてください。私達は、あなたに危害を加えるつもりはありませんから。私の名前は、サチ。彼は、ヒソカ。あなたの名前は?』