どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第3章 特訓
「けど、満更でもないんだろう?」
「はは、そうみたいです」
言いながら、自分でもおかしかった。
「言っておきますけど、Mという訳じゃあ、ないですからね」
「そうなのかい?もっと欲しそうな顔をしてるけど」
「いえいえ」
立てた膝に手を付き、ググと力を込める。
うん。どうにか立てる。
痛いを通り越して苦しいけれど、やはり手加減はしてくれているらしい。纏さえ出来ていれば、すぐには死なない程度には。
……すぐには。
「できれば二度と、頂戴したくないですよ」
無理に口角を上げるが、額には脂汗が滲む。
次は何処を狙われる?
どうやって躱せばいい?
技術の無い私ができる事。
──それは、彼の動きを予測する事。
私は腰を落とし身構えた。と言っても、勿論型なんて分からないから、身体が動くままにだ。
けれど奇妙な事に、その取って付けた構えに、違和感がない。
私は、誘われなければ行かないボウリングや、学生時代の体力測定で行われる様々な競技を思い出した。
他人と比べて特別数字が悪いというわけではない。けれど〝こうじゃないのだろう〟と、毎度感じていた。そう感じつつも、力の入れ方も修正の仕方もイマイチ分からず、結局〝違う〟と思いながら終わる。
まぁ、やり方を聞こうとも思わないのがいけないのだろうが、今回だって、そんな違和感があって然るべきだと思うのだけれど。
「うん、悪くない」
ヒソカが楽しそうに言う。
ホントに?なんて思うも、彼は一歩一歩着実に近付いている。そろそろ考察は止めて、次の攻撃に集中しなくては。
私は細く息を吐いた。
右か、左か。彼の腕は、動く気配が無い。
わざと力を抜いているのだろうか?
いや、蹴り!頭だ!!!
ばっと、片脚を広げ片手を床に付きしゃがむ。髪の毛が、頭上を通る彼の足に触れた気がした。跳ね起きるついでに回り込み、間合いを取る。
しかし彼は飛ぶように眼前に迫り、その腕は槍のように、無遠慮に私を貫こうとする。
右!
彼の手刀が耳元を掠める。
左!
首筋に風圧を感じる。
右!
胸元のフリルがチッと音を立てた。
そのまま、横!!
私は身体を逸らした勢いでバク転する。
そしてその後、更に後方へと飛んだ。彼と距離を取り、頭の中の整理をするためだ。
……なにこれ。