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どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】

第3章 特訓


正直、意味が分からない。
バク転なんてした事もないのに。出来るわけがないのに。
いや、バク転だけじゃない。その前にヒソカの攻撃を避けたのだって、殆ど反射だ。間合いを取った事以外は、しようと思ってした動作ではない。避けなければと思ったら、そう身体が動いたのだ。

「サチ、君は武術の心得も筋力も体力も、全く無い筈だろう?そんなに動いちゃ、いけないんじゃないのかい?」

ヒソカが、意地悪そうな笑みを浮かべる。

「君は、全くの素人っていう体で戦い方を教わりたいんだろう?」

てい、って……。

「そんなつもりじゃないです!正直私にも何が何だか……!」

言葉にならない分が、身振り手振りとなって現れる。伝わるだろうか。

「まぁ、そういう事にしておいてあげるよ。動きにムラがあるのは確かだからね」

ヒソカはそう言って、私の手を取った。ハッとして振り払おうとするが、動かす事ができない。

「ムラ……?」

「そ。君の動作には無駄が少ない。その一点のみ言えば、下手なハンターよりは上だろう。だが、警戒心の無さから来るスキが多い」

私は、拘束された自分の手を確認する。彼が言わんとするのは、こういう所だろう。組手中にも関わらず、自分の事や会話に夢中になってしまうような。
彼は私の手を解放し、更に続ける。

「それに、行動を起こす迄の判断に時間が掛かり過ぎている。一先ずの課題は、そのムラを無くす事だ。咄嗟の判断能力というやつは、格闘センスに加え、経験に基づく勘がモノを言う」

経験に基づく、勘。

「それってつまり」

「特訓続行、ってだけの話さ」




もう、3時間は動きっぱなしだろうか。
修正点はヒソカが教えてくれる(攻撃しながら)ので、何とか彼の手刀をまともには貰わず済んでいる。
何故自分がこんなにも長時間動けているのか理解し難いが、そうは言っても、そろそろ限界が近い。目眩がする。
そう感じた瞬間、足の力が膝からガクンと抜けた。ヒソカが二重になって見える。自分の呼吸音が、うるさい。

「うん。今日は初日だし、この位にしておこうか」

……なんでこの人、汗ひとつ書いてないんだろう。
ああそっか。ヒソカだからか。

「遠いなぁ」

私は、倒れ込むようにして床に転がり、ぼそりと呟いた。
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