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どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】

第3章 特訓


「あの、ヒソカ」

「なんだい?」

「私って」

言葉に詰まる。何と言えばいいのだろう。端的に、“念の才能はありそうですか?”だろうか。でも、それに対する答えを聞いて私はどうしたいのだろう。劣等感を覚えるのも安堵するのも違う気がする。影響されないのが一番だろうが、聞けば忘れる事も容易では無いだろう。

「やっぱり、何でもないです。……私も、ヒソカのような纏が出来るように」

なりたいです、では弱いだろうか──

「なります」

──なんて不意に思ったせいで、宣言になってしまった。
切れ長のヒソカの目が、心なしか丸くなる。
身の程知らずだと、思われただろうか。
そんな考えが頭を過ると、かっと顔面に熱が集まった。
熱い顔は勿論だが、同時に自信のなさも恥ずかしく、私は目を伏せつつも小さく「から」と付け足した。

「そうかい」

柔らかい声に顔を上げると、彼は私の葛藤を見透かすような、そしてどこか嬉しそうな、そんな優しげな目をしていた。
思わず、どきりとする。

「じゃあ一つ、ゲームでもどうだい?」

「ゲーム、ですか?」

「そう」

瞬間、左頬に鋭い空気の流れを感じた。
見ると、ヒソカの刃物のように伸ばされた右手がそこにあった。
触れていないはずの頬がピリリと痛む。そしてその先を、温かい物が伝おうとする。

「今から、こんな風に君を攻撃する。君はただ避け続けるだけでいい。勿論、手加減もしてあげよう。けど、纏が解けると死んじゃうから、気を付けてね」

私は知っている。これは、血液だ。
サーー、と血の気の引く音がする。

「何をぼんやりしているんだい?」

耳元に息がかかる。
“生命の危機である”と、私の身体が警報を鳴らす。
纏!と、脳内で頻りに声が響く。
私は無意識に両腕を盾とし体を丸めた。
瞬間、腹部に強い衝撃が走る。

背中を壁に強かに打った。反動で直ぐには息が吸えず、咳き込んだ後ようやく呼吸ができた。
けれど、このまま壁際でうずくまっている場合じゃないって事だけは分かる。
霞む目で確認するのは、先程まで自分が立っていた場所。そしてヒソカ。歩を進める彼が、左拳を緩める。腹部に風穴が開かず済んだのはそういう事かと一人納得した。
それでも、

「容赦無い、ですね」

少なくとも、レストランでの対応からは考えられないだろう。
けれどそれが、何故か少しだけ嬉しかった。
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