どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第3章 特訓
「嬉しそうだね」
自分の口元が緩んでいる事に、私は言われて気付いた。
嬉しそう?当たり前だ。
「ええ。まさか自分が念を使えるようになるなんて、想像」
したことあるわ。中高と、割と当然のようにしてたわ。
「はしても、想定したことはありませんでしたから」
うん、そうそう。
ちゃんの現実との区別はつけてたはず。
だから大じょう……ぶ。
何だか、懐かしさと共に黒歴史的なものを思い出しそうになったので、コップの中に木葉を浮かせた映像が脳裏に蘇ったところで心を無にした。
「やっぱり君は、なかなかおかしな事を言うね」
「そうですか?」
彼は、口元に手をやりくつくつと笑った。
流石のヒソカも他人の脳内映像までは見られないとは分かっていても、思い出していた事柄が事柄だけに恥ずかしい。
と言うか私、また余計な事言ったんじゃないだろうか。想像して想定しないって普通ならどんな状況なんだ。
「サチ、君は念についてどれくらい知っているんだい?」
「どれくらい、ですか?」
どきりとする。はぐらかした方がいいのだろうか。
いや、私は教えを乞う側だ。それには念も含まれている。付け焼き刃の嘘なんてすぐバレるだろう。吐いたところでマイナスの印象を与えるだけだ。
メリットは、ない。
「基本的な事は、知っています。纏・絶・練・発からなる、四大行。六種類のオーラ系統とその特徴。凝や円などの応用技についても、ざっくりとは分かっているつもりです」
決心して話しただけに、声が硬くなる。
「素晴らしい。どうしてそんなに詳しいんだい?」
「……本で、読んだことがありますから」
「本、か。詳細な書物もあったものだね」
「疑ってます?」
「さぁ。どうだろう」
掴めない人だ。一言一言に神経を使う。
ため息がわりに視線を落とすと、手の周りでオーラがゆらゆらと揺れていた。動かすと、それが少しブレる。
そう言えばヒソカの纏は、意識していないだろうにも関わらず、均一でブレがない。私も、あんな纏が出来るようになるだろうか。
あの時、ゴンとキルアはかなりすんなり出来ていた印象だったけど、私はどうだったんだろう。