どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第3章 特訓
「念……!?」
驚きのあまり、両手を見ながら思わず呟く。
「おや、知ってるのか。なら、話が早い」
指摘されて、あっと思う。一般人が念を知っているなんて、不自然だっただろうか、と。でも、下手に知らないふりをしてボロが出るよりはいいだろうか。なんて思いつつ、ソファーに腰掛けるヒソカを目で追う。
「君の体から吹き出しているソレは、君の生命エネルギーが可視化されたものだ。正確には、オーラと呼ぶ。手始めに、まずそのオーラを自分の身体の周りに留めてみてくれ」
彼は頬杖をついて、いつもの笑顔でこちらを見つめている。
やり方とかコツとかの説明、無いんだ。
えぇと、ウィングさん、なんて言ってたっけ……。
思い返すのは、天空闘技場編。ゴンとキルアがズシ達に出会い、念の存在が明らかにされた話だ。
キルアの脅迫カッコ良かったんだよなぁ、なんて、はじめてHUNTER×HUNTERを読んだ日を懐かしむ。いけない、だいぶ思考が逸れてきた。ウィングさん、ウィングさん、ウィングさん。んー確か、身体全体をオーラが巡るイメージをするんだっけ?そしてその流れが、段々と緩やかになるよう意識する──。
私は、長く細い息を吐いた。
肩を下ろして力を抜く。
目を閉じると、ほとばしるオーラを一層強く感じた。
──ダメだ。勢いが強すぎてコントロールし切れない。
薄く目を開け、手を見る。
精孔が開いた直後よりは随分マシだが、まるで洪水の様に、あちこちで氾濫を起こしているように見える。
いっそ水中にでも放り込まれたら流れがイメージしやすそうなものを……。
あ、そうか。それをイメージすればいいのか。
「うん、上出来だ」
どれ位時間が経っただろう。意識し忘れた頃、ヒソカの声が聞こえた。瞼を開くと、吹き出していた蒸気が皮膚を覆うように、緩やかな流れを残しつつ留まっているように見えた。
「これが、私のオーラ」
何とも感慨深い。全部、漫画の中の出来事としてしか捉えたことがなかった。なのに今、私の体に起こっている変化は、確実にその世界のものだ。