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どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】

第8章 君の理由


『そのあと軽く集めた情報でさえ、出自も、経歴も、外見的特徴も、母の語っていたものと全く相違無かったわ。母という存在が居たことを除けば、だけどね。……あたしはすぐに“この男が父だ”と確信したわ。そして知れば知るほどに、鼻持ちならないヤツだと感じた』



──不意にサキが思い返すのは、あのパーティー会場。ワイングラスを持つヘンリーが、幾人かの女性に囲まれる。
そして、どうしてあなたは独身なのか、また結婚相手として自分達はどうだろうかと尋ねる甘ったるい声がいくつも飛んでいた。
ヘンリーは、皆素敵な女性だと伝えた上で、

『自分は仕事人間ですから、妻や子にきっと寂しい思いをさせてしまうでしょう。それが嫌なんですよ』

と柔和ながらも真剣な眼差しで伝えた。



『──アイツは嫌味なくらい外面が良くて、尚且つあたしの神経を逆撫でするのが、これ以上なく上手かったわ。狙ってやってんのかってくらい。……そうこうしてる内に情報も結構な量が集まって、さてどうやって近付こうかと考えていた折よ。贔屓にしてる情報屋が気を利かせて、“特ダネ”だと言ってとんでもない情報を売り付けてきたのは』

酒場だろうか。サキは立ち寄った店で、黒いキャップを目深に被った女に声掛けられる。女はガヤガヤとうるさい店の中、猫の足音のような声でサキに耳打ちをした。

『“清廉なイメージの定着しているヘンリー議員と某暴力団との数年に及ぶ癒着”──既に関係は切れているようだったけれど、確かに、世間に知れればアイツの信用の失墜は免れない情報だった。でもそれだけなら、精々アイツを追い込む手札の一つに過ぎなかったわ。けどその情報で、あたしはあたしの人生計画を大幅に書き換えなきゃならなくなった。──あたしはその暴力団の名に、確かに聞き覚えがあったのよ』

そこまで語り、サキは一度息を整えた。
ふっと浮かぶ、チュンイェンとイルダの顔。

まさか、と思うと同時に視界が揺れた気がした。

『……ええ、そのまさかよ。その暴力団の名は、あたしが10歳だったあの日……遺品になって帰ってきた二人への依頼ついて長老へ直談判に行ったあの日に、長老達がこそこそと話していた組織のものと同じだった。二人の仕事の依頼主が、その組織だった、と』
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