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どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】

第8章 君の理由


『そうだお嬢ちゃん、あそこのパン屋さんへ行ってみようか!心配ない、おじさんの奢りだ』

『じ、自分の分は自分で出せます!』

『いい、いい。子供は大人に頼るもんだぞ』

そう言ってわしわしと頭を撫でるおじさんをくすぐったく思いながら、サキは胸が温まるのを感じていた。
おじさんは着いたパン屋で一番小さなパンを指差すサキを見て、トレイに色んな種類のパンをぽいぽいぽいっと山のように積み上げると、自分が食べたいのだと言ってニカッと笑った。

サキらはそうして噴水のある広場のベンチに座り、買ったパンを頬張る。

『ひょっとして、家出したのかい?』

夢中でパンにかぶり付くサキを隣で見ながら、おじさんが静かに尋ねた。
はた、とサキの手や口が止まる。
おじさんはそれを、yesと取ったらしかった。

『おじさんも一緒に謝ってあげるから、お家に帰ろう。どこから来たんだい?』

『…………流星街』

『流星街!?あそこはとても人間の住めるような場所じゃあ……!』

サキがぽつりと呟いた単語に、おじさんはにわかには信じられないといった口調で反論しかけたが、深く俯くサキに言葉を止めた。
そして、少しばかり考え込んだあと、おじさんは力強くサキの両肩を取り、

『よし分かった!お嬢ちゃんはおじさんの家に来なさい!』

と、驚くサキの目を真剣に見つめた。




『──優しい人と、出会えたんですね』

私は、優しかった自分の父を、無意識に“おじさん”に重ねた。
実際、頼る大人がいなかったに等しいサキにとって、“おじさん”は彼女が初めて“父親”を感じた人間だったのではなかろうか。

『……優しい人、だったわ』

『“だった”……?』

『もう、随分前に死んでるもの。殺したのよ。あたしが』
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