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どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】

第8章 君の理由


私は、サキを抱き締めてあげられるものならそうしたい、と強く思った。そしてそれが出来ない自分が、酷くもどかしかった。
そんな私をサキが眉尻を下げ見つめ、ゆっくりと瞬きをする。

『けどさ、街を出ると決めたときにあたし、皆には本当に散々なことを言ったのよ。“そんなに死にたいなら、この街と一緒に死ねばいい”って』

サキがふっと思い出すのは、驚き引き留めようとするマチやノブナガ、ウボォー、それに、悲しげな表情のクロロ。そして他の“家族”達から向けられる、困惑や苛立ち、呆れや哀れみといった、様々な目。

『あたしは本当に、幼くて、馬鹿だった』

サキは視線を落としたままに言う。

『チュンイェンやイルダに皆を頼むと言われていたのに、あたしは自分が可愛くて、皆を捨てて街から逃げ出したのよ』

……私は、サキが以前言っていた、“皆に合わせる顔が無い”という言葉の意味はそれだったのか、と不意に思った。きっとサキは、ずっと自分を責めながら生きてきたのだろう、とも。

『……よしてよ、同情なんて』

サキはそう言うと、大きくため息を吐いた。
そして再び、古い記憶を辿る。

『あたしは、有り金全部が入った財布とカビたパンの欠片を布袋に入れて、廃棄物の運搬車にこっそり飛び乗った。何度も何度も財布の中の小銭を数えて、三日は持つと思ったわ。そうして、すれ違う車に乗り移りながら一日半以上かけて、あたしは大きな街に着いた。もう、おなかペコペコでさ。早速何か食べ物を買おうと思ったの。でも、持っていた全財産を出しても、小さなパンの一切れさえ買えなかった。物価が全然違ったのよ。だから、どうにかしてお金を稼がなきゃって思った。でも、街には塵一つだって落ちてなくてさ……ゴミ山(売るもの)が無いのにどうやって皆お金を稼ぐんだろうって、本気で思って、途方に暮れた』
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