どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第8章 君の理由
サキはそこまで思い起こし、一際深く呼吸をした。
『二人は“家族”ではなかったけれど、子供たち皆に優しかった。本当に大好きだったわ。……二人が街を離れたのは、長老から直々に派遣命令が出たから』
と、視線を落としながら、サキはことのいきさつを語る。
『アンタも知ってるでしょうけど、流星街はマフィアや裏組織と太いパイプを持ってる。だから、ままにあるのよ。人員派遣の要請が。まぁ、そういった組織じゃない場合もあるし、長老から直々に、っていうのもあまり無いんだけど……、あたし達のような戸籍の無い人間が必要な仕事ってのはつまり、命の危険を伴うもの、ってコト。それでも、ゴミ山を漁るよりずっとお金になったから、素質のある者は皆、大人になったら率先して仕事を請け負っていた。あぁ、対象が子供の場合もあるけど、その場合名目は“育成”だから、ちょっとニュアンスが違うんだけど』
そう言ってサキは、ふっと笑った。
『二人は本当に強かった。だから心配はしても、強く引き留めはしなかったの。けど……間違いに気付くのは、いつも手遅れになってからなのよね』
穏やかな声色とは裏腹に、掴んだ腕には爪が食い込む。
サキはそっと視線を落とした。
周囲の人々の話し声や足音が、やたら大きく聞こえる気がした。
『二人は、言った通りすぐに帰ってきたわ。多額の報酬と、遺品になってね』
腕が痛む。
けれどそれよりもずっと、ずっと胸の方が痛い。
心臓を、直に掴まれている気さえした。
『一週間。たった一週間だった。二人が笑顔で手を振った日から。二人の受けた仕事が一体どんなものだったかあたしに知るすべは無かったけれど、死が決定事項の依頼だったんだと察しは付いたわ。すぐ長老に直談判したけど、“申し分ない対価だ”と言って、取り付く島もなかった」