どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第8章 君の理由
降りしきる雨の中、黒髪の少年に手を引かれ、悪路を駆ける。そうしてたどり着いた一室には、肩を寄せ合う人々が居た。
その多くは、年端もいかないような少年少女達で。
『流星街(あそこ)じゃさ、捨て子なんて大して珍しくもなかった。そうじゃなくても、親が死んで身寄りがなくなったり、怪我や病気で一人じゃ満足に生活できなくなったり。他にも色々理由はあるけど、まぁそういう人達が寄り集まって、一グループ10人から15人くらいで、ある種のコミュニティ……言わば家族のようなものを作っていたの。プライドの高い母は住人たちに迎合せず街のはずれで隠れるように暮らしていたから、それまで縁がなかったんだけど……皮肉よね、母が弱って、あたし一人で出歩くようになったから、あたしには家族が増えた』
私はその中に、以前サキの記憶の中で見た団員──ノブナガ、ウボォー、マチの三人──の顔ぶれがあることに気付いた。
『初めて話しかけてくれたのは、クロロ。日が暮れ始めると母のもとへ帰る私を、いつも気にかけてくれていたわ。しばらくすると、他のコミュニティの友達だって出来た。思えば、あの頃が一番楽しかった』
サキの脳裏に色んな人の色んな表情が、次から次へと浮かび上がる。そうして広がった映像を、サキは大事そうに胸にしまった。
何かに、区切りを付けるように。
『でも、母は日を追うごとに壊れていったわ。その内、父に関する話しかしなくなった。愛のささやきも、恨み言も。次第に、会話が成り立たなくなっていった』
サキはそう言って、一度息を吐く。
その息は、微かに震えていた。
『そして、あたしが10歳になった頃、それは起こったわ』
サキは片手で自分の腕を掴み、爪を立てる。