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どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】

第8章 君の理由


ふと、そんなふうに思いながら三人のやり取りに耳を傾ける私を、サキが見ていることに気付いた。
いつから、そうしていたのだろう。

『どうかしましたか?』

そう尋ねると、サキは少し目を泳がせた。

『いや……アンタってやっぱり、あたしとは全然違うなって。……ちょっと羨ましいわ』

『えぇ??羨ましいって、どこがですか?』

『……結局は楽観的になれるトコ?』

『んー、まぁ、確かに』

私は、何だかんだでポジティブに考えようと癖付けていた自分を振り返る。

『でも、そう考えた方が少し希望が持てて……ちょっと楽になりません?』

『希望ねぇ。持ってて良かった試しなんて無かったけど』

『きっと、これから良くなるんですよ』

『……やっぱ、あたしと全然違うわ』

私はサキの発言がおかしくて、ふふっと笑った。

『当たり前じゃないですか。私とサキは、全くの別人なんですから』

サキの過去を詳しく聞いたことは無いけれど、彼女と私では、見てきたものも、感じてきたことも、きっと全然違う。
でも、だからこそ、今の私があり、今のサキがいる。

『……それは、過去を肯定してるの?』

サキが静かな声で聞いた。
うーん、と、私は“なぜ生きているのだろう”と思いながらも、ただ“死んではいけない”と念じ過ごした日々を思い返す。
“死んではいけない”から、生きていたというだけの日々を。
良く考えようと思うことにさえ、疲れてしまっていた日々を。

……少しだけ、気が沈む。

『……よく、わかりません。いえ、肯定も、否定も、したくないというのが本音です』

と、私はサキを見つめ返した。

『けれど、今の私を構成しているという事実だけは、確かです。だから、その事実を事実として、ただ置いておく……、そうしたらそのうち、ただの景色の一部になっていると、そう思いません?』

私は、サキに問い掛ける。
微笑むようなつもりで。
けれど、胸が、苦しい。

『──なんて、仕舞い込んでおくと、もっと辛くなりそうだから……そうなればいいなって思うだけなんですけど。ほら私、小心者なんで』

へへっとサキから目を逸らし笑う私を、彼女はただ、ずっと見つめているようだった。

『いや……アンタ、強いわ』
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