どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第8章 君の理由
一方、前で走る三人は、まだ髪の話をしているらしかった。
「くっそー、どうやったって決まらねぇ!」
サラサラの金糸をなびかせるクラピカの隣で、レオリオが再び声を上げる。
元とどこがどう違うのか、彼には申し訳ないが私にはよく分からない。
「そんなに言うなら、ボクがスタイリングしてあげようか?」
と、彼を眺めていただけに見えたヒソカが、意外にも声を掛ける。
レオリオが少し驚いた顔を見せる横で、クラピカがヒソカの髪に視線を移し、まじまじと見つめていた。
ひょっとしたらクラピカは、あの髪型になったレオリオを想像したのかもしれない。というか、私はしている。
いや、むしろ髪の長さ的にはクラピカの方が似合……わないな、うん。
「ありがてぇ話ではあるが……悪いな、これはオレの戦いなんだ」
「そう」
奮闘し続けるレオリオに、ヒソカが一言、素っ気なく返す。けれど、少しばかり残念がっているようにも聞こえた。
「素朴な疑問なのだが、一体どうすればその髪型になるのだ?」
少し間を開けて、クラピカが真顔でヒソカに尋ねた。
確かに、それは私も気になるところだ。だって、彼の髪は明らかに重力に逆らっているのだから。
いやそれを言えばゴンも同じなのだが、あれは完全に彼の髪質のなせる技。ヒソカの、少し細めの実はサラッとしている髪とは違う。でも、ガチガチに固めている感じでもないし……は!念!?まさか念なのですか!?
「ん?これかい?優しく撫でてやるだけさ。ガラス細工を扱うようにね」
私が胸の中で声を荒げていると、ヒソカはどちらともつかない答えを返し、クラピカの髪を片手でさらりとすいた。
「っ!?な、なにをする!?」
「おや。君も、髪に触れられるのは嫌だったかい?」
過剰なスキンシップに驚くクラピカに、当の本人であるヒソカは、とぼけたように小首を傾げた。
うん、ヒソカ、かなり馴染んできている。
「それもあるが……私は男だ。そういう行動は謹んでくれ!」
「コイツ女顔だもんなぁ。勘違いも分かるぜ、ヒソカ」
「うーん、そんなつもりは全く無かったんだけど」
原作を知る私としては、二人とヒソカが仲良さげに会話するこの光景が、どこか冗談のように感じられてならなかった。
しかし、それ以上に“嬉しい”という感情が胸の奥に湧き上がる。
何か、物事が好転する、兆しのようなものを感じて。
