どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第8章 君の理由
クラピカとレオリオが、サキを心配しているのだろう、なんとも言えぬ複雑そうな表情を浮かべる。
その顔を見たサキが、はっ、と乾いた声で笑った。
「……なんってカオしてんのよ」
サキはそう言って目を細める。そして、少し背伸びをして二人の頭をぐしゃりと掴み、ガシガシと撫でた。
二人はされるがままに頭を傾け、サキを見る。
彼女は二人の頭を掴んだまま片方の口角だけを上げ、
「サンキュ」
と、前の方を見ながら小さく言った。
視界の端で二人の目が、心なしか緩んだ気がする。
彼女の胸の痛みがいくらか穏やかになっていることに、私はその時気付いた。
「──げっ」
突然、すぐ後ろからキルアの声がした。
何だろうかとサキが振り向くと、彼は彼女の両脇の、少し上の方を見ているようだった。
いや、キルアだけではない。ゴンとヒソカの目も、そちらに向いている。
私達がそれらの視線を辿ると、そこには鳥の巣が2つあった。
否、クラピカとレオリオの頭が、鳥の巣になっているのだ。
私達全員分の視線が集まったことで顔を見合わせた二人はそうして、自分の頭頂部の惨状を知ったらしかった。
「おいおいマジか、勘弁してくれよ……!言いたくねーが、セットに結構時間掛けてんだぜ!?」
両手で髪に触れ、レオリオが半べそをかく。
「ゴメンゴメン。悪かったわよ。でも……あら?ひょっとして男前度上がったんじゃない?無造作ヘアってやつ?」
「そ、そうか?」
「真に受けるな。今につがいがやって来るぞ」
クラピカが手櫛で髪を整えつつ、満更でもなさそうな顔をするレオリオに鋭く突っ込む。
レオリオがじろりとサキを恨めしそうに睨み髪を整え始めるので、彼女は小さく舌打ちをして、
「あーあ、セッカク面白くなりそうだったのに」
と呟いた。
『サキって、そういうとこありますよね……』
私が半ば呆れていると、露骨に嫌そうな顔を向けているキルアが目に入った。
「なぁ、あのビッチねーさん、いつもあんな感じ?」
キルアが口元を手で隠し、ひそひそとゴンに尋ねる。
ゴンは困ったようにあははと笑って、
「どうだろう。でもオレ、あんなに楽しそうなサキは、初めて見た気がする」
と、澄んだ声で言った。