どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第8章 君の理由
「女性としての自覚ぅ?あるわよ。あった上でコレなの分かる?てかお淑やかって何?自己主張ゼロって意味?大体さぁ、止める必要ある?生きてりゃいずれ知る話でしょ」
サキが酷く苛立たしげに、しかし自分を落ち着かせながらそう話す。
二人は、一度口を開けたまま言葉を詰まらせた。
私も彼女に、何をどこから、どう話せば良いのか分からない。
でも、やっぱり性的な話を子供たちにするなら、真面目に、順序立てて話したいとは思う。いずれ知る話なら、尚更。
それに、サキにはもっと──
「……そうではない。もっと、自分を大事にしろと言いたいのだ」
クラピカが、諭すようにサキを見る。
彼の真剣な目に、サキはそっと目を伏せた。
胸が、じくじくと疼くように痛い気がした。
これは、サキの痛みだ。
彼女は一人、徐々に走るスピードを上げる。
「あ、おい!」
レオリオが呼び止めるような声を出したが、サキは構わず速度を上げ続けた。
『サキ……』
どうしたのと聞くのも憚られて、私はただ、呟くように彼女の名前を呼んだ。そのときだ。
「何だか分からねーがよ」
レオリオがサキに追い付き、少々呼吸を乱しながら言った。
敢えて視線を外しているのだろう彼は、ただ真っ直ぐに前方を見ている。
「話なら、いくらでも聞くぜ」
レオリオの、心地よく低い声が胸に響いた。
サキは、その横顔をじっと見つめる。
「その通りだ」
と、今度はクラピカの声がレオリオとは反対の側から聞こえ、サキはおもむろにそちらを見やる。
「仲間、なのだろう?」
そう言って横目に目を合わせるクラピカは、真剣な表情ながらも、口元に微笑みを浮かべていた。
『……仲間、か。あたしが言ったんだっけ』
前髪を掻き上げるサキは、ふっ、と一つ、小さく笑う。
そして、レオリオとクラピカに続くように駆け寄る三人……特にゴンとキルアを見てから、
「ん。まぁでも……またにするわ」
と、眉を寄せたまま微笑んだ。