どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第8章 君の理由
不意にキルアの声が飛ぶ。
走りながら、やや上目遣いにサキを見る彼と目が合う。
「ビッ……!」
私とサキの声が重なった。
サキも、キルアにそんな形容をされるとは思っていなかったらしく、眉を寄せ、頬をひくつかせている。
「言っとくけどねぇ、あたしこう見えてまだ処女なのよ?処女」
『……は?』
え?何か今……聞き間違いですよね?
「?しょじょってなに?」
「ゴンはやっぱ知らないか。つまり男性経」
『わーわーわー!』
しっ、信じられない!!
私は脳内で叫び回る。
子供の前で……っていうかそもそも人前でなんて話を……!!
『わーっ!!』
「んっう、んうんうんん!(ちょっと、なにするのよ)」
サキのくぐもった声に、私ははじめて彼女の発言が途中で途絶えていたことに気付いた。
と同時に、口元に私達のものではない手が2本もあるということを知る。
手の主であるクラピカとレオリオは……慌てて塞いでくれたのだろう、少々髪を乱しながら、サキに驚きと窘めの目を向けていた。
「サキ!!君には恥じらいというものが無いのか!?少しは女性としての自覚を持ちたまえ!!」
「そうだぜ、サキ!!もっとサチみたいにお淑やかにだなぁ!」
「ん゛ぅ?(はぁ?)」
私がお淑やかかどうかはさておき……サキは声を出してから口元にある手達を見たあと、「まだ当ててたの」と言わんばかり二人の顔を見る。そして、その手達をぐっと力任せに外すと、
「ジョーダンじゃないわ!」
と、ふんっと鼻を鳴らした。