第5章 君がいないと退屈なんだ
「…つまんない。」
一年生の職場体験が終わり、また前のような日常が戻ると、そう思っていた。なのに、爆豪くんは職場体験が終わってから毎日不機嫌で、終いには、三年の教室へと来なくなってしまった。まさか、爆豪くんも私を倒す事を諦めてしまったんじゃないだろうか。そんな不安が過ぎった。
「そんなに気になるなら行けばいいじゃん。一年の教室に。」
そうか、会いに来てくれないなら私から会いに行けばいいんだ。いつも爆豪くんが来てくれるから自分から会いに行くという考えがなかった。盲点だった。
「じゃあ、早速行ってくる。」
そう言って私は一年A組へと向かった。さっきまで退屈で沈んでいた筈の気持ちが嘘のように、私の胸は高鳴っていた。私が会いに行ったら爆豪くんは驚くだろうか。それとも、嫌な顔をされるだろうか。そんな事考えても、会ってみなきゃ分からない。迷惑がられたらちょっとショックだけど、まあいいや。
一年A組の教室を覗くと、爆豪くんは机一つ挟んで、友達だろうか、その子に勉強を教えてるように見えた気がしたが、机を殴りつけたり怒鳴ったり、勉強を教えてる風には見えなかった。
「爆豪くん、何やってんの?」
顔を上げた爆豪くんと目が合った。
「なんで、クソ女がここにいんだよ!」
机の上には教科書やノートが広がっていた。勉強を教えてる風には見えなかったけど、勉強を教えてたらしい。爆豪くんに勉強を教える友達がいるとは意外だった。友達とか全然いなさそうなのに。教えられてる子も、こんなに怒られてまで爆豪くんに勉強を教えてもらおうと思うなんて、肝の座った子だな。
「三年の筒井さん!あれ、もしかして爆豪となんか約束ありました?」
「ううん。暇だったから爆豪くんで遊ぼうと思って。」
「俺は暇じゃねえ!つーか俺で遊ぶってどういう意味だ!殺すぞ!」
「そっか、そっか。期末テスト近いもんね。期末テストは演習試験もあるもんね。」
「そうなんすよ!俺勉強全く自信なくて、最近爆豪に教えてもらってたんすよ!」
だから三年の教室に来なかったのか。爆豪くんが私を倒す事を諦めた訳じゃないと知って安心した。