第1章 ツキノ寮の管理人
「ただいま戻りました…ってどうしたの2人とも!」
「あっ夜おかえり!」
「夜さんおかえりなさい!」
エントランスの扉を開けた彼は長月夜。
私と同い年の20歳で、恋と違って私に優しい男の子だ。
「け、喧嘩してるの…?」
夜の怯えた声に、私はパッと恋の胸ぐらから手を離す。
離した際になんか恋から「ぐえっ」って聞こえたけど多分聞き間違いだと思う。
「喧嘩じゃないよ。恋の服のボタンがほつれてるかどうか確認してたの」
「俺!!今日!!Tシャツなんですけど!!ボタンありませんけど!!」
「だまれ恋。そう言えば、これ夜の分の荷物!今のうちに渡しとくね!はいどーぞ」
そう言って私は夜に小包を渡す。
「そうだった!ごめんタイミング無くて取りに来れなくて…ほんとごめんね」
「全然気にしなくていいよ~!今日はもう仕事終わり?」
「うん、もう今日は終わり。荷物のお詫びに近々何かデザートつくって持っていくね」
「まじでか!!ありがとう夜!!!」
「うん、じゃあ2人ともまたね」
私と恋は夜の背中を見送って、エントランスに静寂が訪れると恋がぼそっと呟いた。
「………同じ出来事でも、人間が違うだけでこんなに対応が違うなんて…」
「日頃の行いですな」
「くっ…なんて世知辛い世の中なんだ…っ!」
恋が四つん這いになって床に拳を叩きつける。
悲劇のヒーローにでもなった気でいるのだろうか。
そんな恋を横目で見つつ、私は隅にある恋の荷物を取りに行く。