第3章 こたつでミッチョン進行中
「パパ、ごめなさぁい…」
「うわぁっ! びっくりしたぁ…」
僕が声をかけると、パパの手からボールが床に落ちた。
『あっ…!』
パパが一生懸命シャカシャカしたクリームが、床に零れた。
どうしよう、僕のせいだ…
僕がいきなり声をかけたから…
「ごめさい…」
僕はなんだか悲しくなってきた。
「どうしたの? なんで泣くの? パパ怒ってないよ? ただ、ちょっとビックリしちゃっただけだから、ね?」
そう言ってパパが僕を抱っこしてくれた。
パパの手から、少しだけ甘い匂いがした。
「パパ、ほんとはケーキ作れないんでしょ? どうして嘘ついたの?」
「う~ん、そうだなぁ…。バレちゃったから言うけど、パパ和の言う通り、ケーキなんて作ったことないよ? でもさ、和のお願いだもん」
ほら、やっぱり僕のせいだ。
僕がパパにお願いしたから…
「…ごめさぁい…」
「どうして謝るの? パパは和の喜ぶ顔が見たいから、頑張ってるだけだよ?」
でも、僕はサトくんのために…
「和はさ、サトくんに喜んで貰えたら嬉しいでしょ? ここがポカポカするでしょ?」
パパが僕の胸をツンツンてした。
「うん。ポカポカなる」
「でしょ? パパも、サトくんに喜んで貰って、嬉しそうな和を見たら、きっとここがポカポカすると思うんだ」
「パパも?」
パパは僕を降ろすと、床のクリームを雑巾で拭いた。
「僕も手伝う!」
僕はパパと一緒にケーキの練習をすることにした。