第9章 関係
「あの…」と遠慮がちな声が聞こえてそちらを向けば、いつかのメガネの子。
「早川の事、よろしくお願いします」
そう頭を下げて、通りすぎた。
森山は私の肩をポンと叩いて「頼むぞ」と言う。
早川くんは、皆に可愛がられているらしい…。
確かに彼は懐きのよい大型犬を連想させる。
にょきっと生えた耳やしっぽを思い浮かべて、クスッと笑みをこぼすと、タッタッタッとリズムよく駆けて来る音が聞こえた。
「お待たせしてすいません!」
「否、いいんだけど…。あっ、あの…」
「葉菜さん!お(れ)とつき合って下さい‼」
そう言って、片手を出し深々と頭を下げる。
彼の真剣さや真っ直ぐさは充分伝わっていた。
認めてしまおう。
彼ならいいのかもしれない…
「よ…ろしくお願いします」
そう言って、彼の手をとった。