第9章 関係
「かえ(り)ましょう‼おく(り)ます!」
そう言った、早川くんの言葉に思考を引き戻した。
歩き出した彼の後に続く。
「あのさ、早川くん。名前…教えてもらえないかな?」
振り向いて、「充洋です‼」とニカッと笑う彼。
(タイプは正反対なんだけどね…)
「いいですか?」と差し出された手をとる。
ぎゅっと握られた手は大きかった。
あたたかった。
「早川、よかったな」
後ろから、小堀の声がする。
「早川に先越されるとか…」
肩を落としているであろう森山の声もする。
「葉菜ちゃん、仲良くね」
相変わらず小堀の隣に並ぶ未菜の声には
「うん」
と、短く答えた。もちろん笑顔で。
「行きましょう」
再び、そう促す彼の手を握り直して歩き出す。
顔も名前も知らなかった後輩が、
実らなかった初恋相手の後輩が
今日から私の彼氏になりました。
‐‐‐‐convert 【完】‐‐‐‐