第3章 取り組むもの
「第一志望どこ?」
そう聞かれて「T大」と冗談で答えた。
いわゆる、日本一と呼ばれる所。
「あのな…本気に聞こえるし、その口が言っても冗談にならないぞ」
と森山は呆れている。
「二人とは離れたい…」
「妹を嫌うなよ」
「嫌ってないよ」
「じゃあ、小堀か…」
その言葉には返事はしない。
それきり、森山は黙った。
カリカリと私がシャープペンを動かす音が響く。
手元を見られていてはやりにくい…。
「あのさ…」
と顔を上げると、思いの他、至近距離に顔があって思わずのけぞった。
「うん?何?」
無駄に整った顔で至って平然としている。
ちょっとムカツク。
「見られてると、やりにくい!」
「邪魔した?でも、すごいな。笠松に教えてやってよ。あいつ勉強苦手だからさ」
「笠松と会話が成り立つ気がしない…」
「まぁ、そうだな」
そう言って笑った。
帰宅部になってから、
今までスポーツに向けていたエネルギーを勉強に向けることに変えた。
お陰様で、成績は悪くない。