第17章 〜前を向いて〜
零お兄さんに言われたことが、スッと胸に浸透して行った
荒れて傷ついた心が癒え、私の背中を押してくれる
そして、この日初めて私は笑った
椎奈「…ありがと、零お兄さん」
降谷「!!椎奈…」
彼は嬉しそうに笑うと、私の目尻の涙をそっと拭った
そして、吸い寄せられるようにお互い抱きしめあった………
しばらくして互いに離れると、玄関の時計を見て笑いあった
椎奈「お昼前だね…。けっこう長い時間くっついてたんだ…」
降谷「そうだね。けど、戻ってくれて良かった」
そう言って、彼は私の頭を撫でた。
その時、流れとはいえ抱きしめられて、抱き合った事実を思い出し、ボンッと顔が赤くなった
椎奈「あ、あの、零お兄さん…!」
降谷「ん?」
椎奈「そ、その……。……ご、ご飯、食べて帰ってください!」
恥ずかしくて、でもそのままでも嬉しかったため、私はお昼を誘った
朝を抜いていて、お腹を空かせたのを今更思い出したのもある
その様子が面白かったのか、彼は一瞬驚いてクスリと笑った
降谷「そうだね。じゃぁ、お言葉に甘えるよ。よければ、一緒にご飯作らせてくれるかな?」
椎奈「!!もちろん!!」
私は、前世で見た零お兄さんの料理のうまさを思い出して、即okを出した
そして、お昼は談笑しながら美味しくいただいた
思えば零お兄さんと話すことは滅多にないので、とても楽しい瞬間だった
そのまま時間が過ぎ、零お兄さんは帰ることに……
椎奈「わざわざ来てありがとね。零お兄さん」
降谷「これからもどんどん頼るように。ちゃんと和人たちにも連絡するようにな」
椎奈「うん!」
笑顔で返すと、彼はまた私の頭を撫でた
降谷「これからも笑顔を大切に。雑誌で見ても今見てもよく思うよ。君には笑顔が一番だ」
爽やかに降谷零の人格で爆弾を投下した彼は、そのまま去っていったのだった
椎奈「…今の、ずるい…」