第17章 〜前を向いて〜
降谷「…言いたくないなら、言う必要はない。だから、できたらでいい。何があったか、教えてもらえるか?」
椎奈「…!!」
零お兄さんの優しい声音に、体が小さく震えた
落ち着けるようにトントンと背中を撫でられる
温かくて優しい、包み込んでくれるような彼に触れ、私は口を開いた
椎奈「昨日、私と和人お兄さんでトロピカルランドにいったの。そこで、組織の取引を偵察する任があるからって…。デートを装うことになった。
丁度その日、実は新一も幼馴染とトロピカルランドにいたの。そこで事件が起こって…、捜査一課の陣平お兄さんたちもいた…。
幼馴染と会ったら、新一が行方不明になってて…。探し回って見つけたら、新一は組織の人間にすでに襲われていた…!私はこの事をすでに知っていたのに…!!それを阻止したくてきたのに!!」
降谷「!!」
混乱してるのに、私は無意識に新一の幼児化の話はしなかった
後半の部分で、私は抑える事ができずに叫んでいた。
私の話を聞いていた零お兄さんが息を呑んだのが分かった
椎奈「私は物語が変わる事を恐れていた…!弟が襲われたのに、私は物語が変わらない事に安心した!!私は…っ」
降谷「!!もういい…!!」
取り乱す私を見て、彼はまた私をきつく抱きしめた
降谷「もういいんだ…。すまなかった、こんなこと聞いて…っ」
椎奈「…零お兄さん…」
こんな酷い私でも、彼はやはり私を落ち着かせようとしてくれる
降谷「君の感情は、なにも悪い事じゃない。知らないことを恐れるのは普通だ。……だから、起こったことを後悔し、後ろを向くのはここまでにするんだ」
椎奈「え?」
てっきり責められるのもと思っていた私は、お兄さんを見上げた
すると、とても優しい目で私を見下ろしていた
降谷「今後は俺たち公安も全面的にバックアップする。同じ過ちを繰り返さないよう、なるべく犠牲をなくすために最善を尽くすんだ」
椎奈「!!」
降谷「前を向くんだ、椎奈。君の知る物語になったからこそ、君にできることはたくさんある。俺たちも協力するから」