第40章 〜ウエディングイブ〜
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それからしばらく経った頃のこと。
伴場さんは恋人がいるにも関わらず、女の人たちとニコニコご機嫌になにやら話していた。しかも、腕を相手の肩に乗せてナンパするようなかんじで、見ているこちらまで嫌な気分にさせられる
しかも、私は毛利一家とメガネのウェイター以外の人にサインを強請られ、手が地味に痛くそれにもうんざりしているのだ
ようやく最後の紙にサインを書き終え、顔を上げた先の伴場さんに呆れた顔をした時だ
?「───お疲れ様です。よろしければ、これをどうぞ」
椎奈「…え?」
突然声をかけられ、そちらを見ればなんと色黒にメガネをかけたイケメンウェイター…今は安室透さんの彼がいた
てっきりこの場では接触しないのかと思っていたが、声をかけられるとは…。
そして、ふと机の上を見れば美味しそうな料理が複数置かれていて目をパチパチ瞬かせる
椎奈「…これ、私にですか?」
安室「はい。あまり食事をされていなかったのでしょう? モデルの方のようですし、高カロリーなものばかり出してしまったので低カロリーのものを特別に用意しました」
椎奈「あっわざわざすいません…では、ありがたくもらいますね」
私が笑みを浮かべてお礼を言うと、ウェイターの彼も小さく笑って一礼した。そして彼は次に伴場さんの元に向かい、携帯を見るように促している。
伴場さんはメールが来ていたらしくその内容を読んでいたが、周りの女の人に内容を見られてからかわれていた
そんななか、彼は「ちょっとトイレ…」と言って女の人たちから離れると、先ほどとは別の携帯を取り出し、怖い顔で少し話して電話を切りながらトイレに入っていった
私はそれをちらりと見、気にすることでもないと判断して早速用意された料理に口をつけた
椎奈「(んっ!! うまうま…!! おまけに低カロリーなんて!!)」
食べた瞬間の美味しさがたまらず、思わず目を輝かせて料理を観察し始めた
その後ろを、伴場さんの後にトイレから出てきた男が通りすぎるのをチラリと見た
ついでに言うと、その男の人が安室さんと話していて伴場さんがぶつかったりしたなどという出来事も、料理に夢中になっていたせいで分かっていなかった