第40章 〜ウエディングイブ〜
椎奈「本当にすみません……。自分、ここのバイト今日が初日で……」
加門「大丈夫!それよりズボンを拭くおしぼりとか持って来てくれる?」
?「は、はい只今!」
そう言って彼はすぐに店の奥に入っていった
ーーー第三者side終了
*
おしぼりを取りに行ったウェイターさんの背を見送り、初音さんたちが何か話しているのを聞きながらため息をこぼす
椎奈「(…自然にできてた、かな?)」
そう心配するのは、このパーティーの主役・初音さんと伴場さんの未来を私が知っているからだ
けれど、それを止めることはしない。だって話が変わってしまうから…
それに、私がここで彼女を止めても、一度絶望してしまった人間は同じことをしようとする
椎奈「(ごめんなさい、初音さんと伴場さん…)」
コナン「? どうしたの、椎奈姉ちゃん?」
さっきから無言の私を不審に思ったのか、コナンくんが顔を覗き込んできた
私は咄嗟に困った顔を作った
椎奈「…実は、家にユキちゃん置いてきたんだけどさ。ケーキが落ちるのを見て、家で悪さしてないか心配になってね…」
蘭「大丈夫ですよ! 大人しい飼い猫なんですから」
椎奈「だといいんだけどねぇ」
実際、嘘は言ってない。きちんとユキは家に置いてきたのだから。まぁ、躾はきちんとしてるので言うほど心配してないのだが…。
しばらく私たちと他愛ない話をしていた初音さんだったけど、彼女が不意に立ち上がった
伴場「お? どこ行くんだよ」
初音「ネイルサロンよ。剥がれてきちゃったからデコってもらいにね」
伴場「んなのやんなくてもいいだろ…。雨かなりキツイし…」
伴場さんが窓の外の天気を見て面倒くさそうに言った
しかし初音さんは予約してあったらしく、最終的には人前でキスしてネイルサロンに出かけてしまった……
そんな熱々カップルのラブラブな光景を見て、私は密かに羨望してしまった自分に思わず苦笑いした
椎奈「(…なんていうか、堂々とお付き合いできるってちょっと羨ましい。そうできないのはわかってるし、納得してるのに…)」
この時私は知らなかった。『彼』も伊達メガネ越しに密かにあのカップルを羨ましげに見ていたことを…───