第39章 〜バーボン、始動〜
何も言っていないのに、頭の良い彼にはなんでもお見通しなのだ
私の心を少しでも軽くしようと、同じ罪を抱えようとしてくれる…
潜入捜査官の彼こそ、助けるべき命をたくさんその手で散らしてきて深い傷を負ってるだろうに…
椎奈「…ありがとう、零さん。でも、もう大丈夫だから…」
私にできることは、これ以上心配をかけないこと。罪を抱えてでも突き進む、彼のような心の強さを養うこと
大丈夫と言ってもまだ心配そうな顔をする彼に、私は困った笑みを浮かべた
椎奈「覚悟なら、もうとっくにできてる。どんな罪悪感を抱えても、お兄さんたちや零さんと一緒にいたいから…」
降谷「椎奈…」
不意に、零さんの手を握るグッと力が強くなりドキッとした
そのまま私の片手を両手で握ると、彼は自分の額にぴとりとくっつけた
降谷「…すまない」
椎奈「…うん」
村田「あ〜………ゴホッゴホンッ」
2人「「?!!」」
完全に2人だけで話してしまっていた状況で咳払いが聞こえ、ハッとなった私たちはすぐさまお互いに離れた
しかし、他のメンバーからの呆れ果てている視線は未だ向けられるまま
萩原「バカップル自慢は他所でしてくださ〜い」
松田「抜け駆けしやがって…」
伊達「別にアピールしなくてもおめでとうぐらい言ってやるって」
村田「ここに得物があればスナイプ出来たのに…」
椎奈「和人お兄さん、あなたの得物は遠距離向き!!っていうか、みんなどうしたの?!」
航お兄さん以外恨めしげに零さんを睨みつけている光景に、私は思わず突っ込んだ
零さんも零さんでそんな視線をもろともせず、涼しい顔でお茶を飲んでいる
私はそれに唖然としてため息をつくが、零さんがコップを机に置くと公安の顔をした彼が小声で重い口を開く
降谷「……悪いが、さっきのようになるのも無理は無いんだ。近々、俺は組織の人間・バーボンとして安室透の面をかぶり毛利探偵に近づくんだからな」
刑事メンバー「「?!!」」
降谷「彼らの周りは事件が多い。毛利探偵の推理ショーにうまく居合わせ、弟子になるつもりだ」
伊達「そういや、お前は表の顔が私立探偵だったな」