第37章 〜ボクっ娘との出会い〜
その後、警察を呼んだ私たちは、項垂れた犯人がパトカーで連れて行かれるのを見送った
世良「それにしても、カバンの中身は無いのになんで犯人を追ったりしてたんだ?」
椎奈「だって、犯罪を見たら追いかけないとダメでしょ? それにこのカバン、うちの飼い猫のお気に入りだしね」
世良「へぇ、なるほど。でも、今後は無理しない方が良いかもな。見てて思ったけどアンタ走るの苦手なんだろ?」
椎奈「ぅっ…」
図星たった。
私がそれで目に見えて落ち込んでいると、まるで慰めてくれるようにユキが私にすり寄ってきた
世良「その猫か? 飼い猫って」
椎奈「ええ。白猫のNAME4#ちゃんで〜す」
世良「随分とおとなしい猫なんだな…。あっ、そういえば紹介まだだったよな?僕は世良真純! よろしくな」
椎奈「!!」
思い出したように世良ちゃんが名前を言ってニッと八重歯を見せて笑った
着ているものは女物でも、ボーイッシュなかんじでイケメン男子にしか思えない
その瞬間、私はその笑顔に妙な懐かしさを覚えた
椎奈「(あれ? なんかこの笑い方…この世界に来て一度見たことあるような…)」
世良「…で? アンタの名前は?」
椎奈「えっああ…。私は工藤椎奈。こちらこそよろしく、世良ちゃんでいいかな?」
考え込んでいるところを世良ちゃんに催促され、ようやく私は彼女に名乗った
すると、彼女は目を見開いてかなり驚いていた
世良「…え。僕が女だって分かったのか?! ほとんどの人が僕を男だと思うのに?!」
椎奈「それはまぁ…。服を見れば分かる人にはわかるじゃない?それ女物でしょ?」
世良「あ、なるほど…」
よほど女だって分かってもらえたのが嬉しいらしく、推理の時の鋭い彼女は見る影もない
しかし、まさかこんな形で知り合おうとは思ってもみなかった
もう少し話していたいが、私たちはお互い用事がある
椎奈「……じゃあ、本当にさっきはありがとうね。私たちは買い物があるしもう行くわ。縁があったらまた会いましょ」
世良「あ、うん! またなっ」
私たちは手を振り合い、それぞれ反対の道へと歩み始めたのだった───