第35章 〜赤と黒のクラッシュ(殉職・謳歌)〜
表は平静を装いながらも、胃がキリキリする感覚を味わっている私
けれど、私はなんとか母さん譲りの演技力で誤魔化そうと、ソファの前のテーブルにお茶セットを置いた
椎奈「え? それは考えすぎだよ。たまに学生が板書でもやるじゃない。重要な単語なんかを別々の色ペンでかくの! 一番いい物件と、それと同じくらい良い物件候補とを分けて印をつけただけだよ?」
降谷「分けただけで別の誰かなんていない、ねぇ…。君ぐらいの有名人が恥ずかしくなく生活できそうな高級でセキュリティも高いマンションと、収入のあまりないアルバイターが済むような目立たない低レベルなセキュリティのマンション…。同一人物が住む候補に挙げるには差が激しくないか? なぁ、椎奈」
椎奈「(ひぃぃぃぃ!!)」
零お兄さんの鋭い眼光が私を容赦なく突き刺す
彼は雑誌を元に戻してユキを解放すると、私のところに近づいてくる
思わず身を引こうとすればその前に腕を掴まれて引き寄せられた
お互いの顔がすぐ目の前にある状態で、まっすぐにブルーの瞳が私を見つめる
降谷「…なぜ、今になって引っ越そうと思った? 公安が手がけたセキュリティのあるこの家は、言わば最も安全な俺たちに助けを求めれる君専用の要塞…。そこを出るということは、まるで、最近君より危険な状況にいる人物に仮住まいまで用意して間を空けて明け渡そうとしているみたいじゃないか…。そう、先日組織によって消された、赤井とかにな」
椎奈「!!!」
チェックをしていた住宅の雑誌を見られただけで、そんなに深くまで見破られてしまうとは…
彼の推理に思わず目を見開いて驚いた瞬間、それに目を細めた彼がフッと不敵に笑った
降谷「椎奈、俺は赤井の死を信じてないよ。あのいけ好かない男がそう簡単に死ぬものか…。かといって、君が手助けをしたような様子もないと報告で聞いている。どうやったかも現段階は分からないーーー」
椎奈「だ、だったら死んだんじゃ…」
降谷「それは、君の反応で無いと確信したよ。暴いてやるさ。この
巧妙な作戦をな」
椎奈「え……ここで聞かないの?」