第35章 〜赤と黒のクラッシュ(殉職・謳歌)〜
ーーー夕方
ピーンポーン……
リビングのソファに座って住宅とインテリアの雑誌を読んでいたところ、インターホンが鳴り響いた
すると、そばで丸まってくつろいでいたユキが立ち上がり、玄関に向かって走り出した
椎奈「あっ、ユキちゃん?!…もう」
雑誌をソファに置いて私も立ち上がり、マシになっている足で松葉杖をつかずに歩きながら玄関までゆっくりと歩いた
扉の前で開けてもらえるのを待っているユキに苦笑いしながらロックを外して玄関を開けると、途端にユキがそこにいる人物に飛びかかった
ユキ「にゃあ!!」
?「おや。とても可愛らしいお出迎えですね」
椎奈「でしょう? 外ではあれですし、どうぞ中に入ってください。安室透さん」
私がドアを大きく開けて中へ促すと、彼もニコッと人に好かれる絵顔で「お邪魔します」と中に一歩踏み出したーーー
その後、家の中に入った彼は本性である降谷零に戻っていた
腕の中にいるユキを優しく撫でながら、私の案内したリビングへと移る
キッチンで紅茶を入れて彼の元に行くと、彼はユキの相手をしながら私がさっきまで見ていた雑誌を鋭い目で見ていた
椎奈「げっ…。ちょっとお兄さん、その雑誌は…!!」
降谷「へぇ、引っ越すのか…」
椎奈「だ、だって一人暮らし寂しいんだもん!!」
降谷「ふーん…」
こうして私と会話しながらも、雑誌のページをめくっていく零お兄さん
冷や汗が滝のように流れそうだ
なぜ自分はソファに雑誌を置いてしまったんだ…
するとあるページをめくったとき、彼の手がぴたりと止まった
降谷「…なぁ、この引っ越しは本当に君とユキだけのものなのか?」
椎奈「えっ…?」
降谷「二種類の色のマーカーで、別々のマンションが囲われている。これはつまり、片方は君の家で、もう片方が別の誰かの候補ってことなんじゃないのか?」
椎奈「(もうやだ、この人怖い…)」